2020年のノーベル物理学賞とドップラー効果

2020年のノーベル物理学賞はブラックホールの研究に授与されました。R.ペンローズは理論的理解に重要な貢献をし、天文学者のA・ゲズとR・ゲンツェルは(研究グループと共に)、天の川銀河系の中心にあるブラックホールの質量を決定しました。その研究では、ドップラー効果の測定が鍵となりました。

二つの観測グループは、補償光学という技術を使って、ブラックホールの周りを周回する星の軌道運動を測定しました。ブラックホール付近の強い重力のため一般相対論によると、恒星の位置と速度は古典的な力学から予言される軌道から少し外れることが予想されます。ブラックホールに最も近づく恒星S2は、周期16年で公転していますが、その軌道は20年近く観測されています。速度については、星が発する光のスペクトル線の赤方偏移から求めることができます。近年の観測で、S2がブラックホールに最も接近するとき、相対論的ドップラー効果により赤方偏移が変化するだけでなく、一般相対性理論に基づく「重力赤方偏移」も実際に起こしていることが確認されました。J.ヴェラチニッヒの論文「天の川銀河系の中心にあるブラックホールが重力の性質をどう明らかにしたか」により詳しい解説があります。。

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